環境に関する教育研究とトピックス

環境に関する研究

海事カーボンニュートラル研究会での主な最新研究

海事科学研究科 准教授 平田 燕奈

海運は我が国の国民経済を支える基盤と言えます。世界有数の海洋国として、我が国の貿易の99.6%を海上輸送が占め、国内貨物輸送の約4割(産業基礎物資の約8割)を海上輸送に依存しています。船舶からのCO2排出量は、2018年には10億7,600万トンに達しており、世界が足並みを揃え有効な政策を実施しなければ、2050年までに国際海運による排出量は、世界全体排出量の17%を占めると予測されています。

そのため、海運分野排出量の削減、並びに排出量取引環境の整備はゼロ?カーボン目標の達成に大いに影響を及ぼします。国際海事機関(IMO: International Maritime Organization)は、海運からの年間温室効果ガス排出量を2050年までに、2008年比で少なくとも半減させ、今世紀中のできるだけ早い時期に海運からの排出を完全になくす努力を目標に掲げています。

こうした背景の中、我々は昨年度「海事カーボンニュートラル研究会」を設立しました(https://sites.google.com/view/mcnra)。研究会の主旨は、気候変動下で海運を維持しつつ、海運業界と政府がゼロ?カーボンに向けて取るべき一連の具体的な方策を提案することにあります。具体的には、海事関連のビッグデータを用いて、海事分野での技術革新、代替燃料、減速運航などの側面からアプローチし、海運排出量の算出?予測?削減?取引に関する研究を進めています。そのほか、気候変動による海水面上昇、天候不順が海上輸送ルートや航海、港湾に及ぼす影響についても研究をしています。

研究会はマルチ学域から国内複数大学や研究機関の研究者によって構成され、定期的に学会や内部発表会にて報告し、最新研究内容を発信しています。また、我々は海洋政策科学部にて2024年度以降の開講に向けて、「海洋脱炭素化」コースの準備を進めております。このコースは、CO2の計測?削減?回収?利活用技術について全般的に学習し、他分野の学生とも協働して行う、問題解決型の専門領域横断型カリキュラムとなります。専門領域横断型カリキュラムについては、海洋政策科学部の「海のBDL」もご参照ください。当コースは国内外初の海洋脱炭素化について全面的に学習できるコースであり、必要があれば英語での開講も対応可能です。

「海事カーボンニュートラル研究会の研究?協力活動概要」