“大学発カーボンニュートラル”
環境保全推進センター センター長 森 敦紀
Covid-19のパンデミックもついに3シーズン目に突入してしまった。当分は明確な出口も見えそうにない。結果としてこれまでのライフスタイルを大きく変化させることを余儀なくされ極めて不自由な毎日が続いている。さらに2022年に入るとロシアのウクライナ侵攻が勃発、両国とも世界有数の資源?物資産出国であるため資源?エネルギーの危機が欧州を中心に深刻な問題として経済活動に大きく影を落としはじめている。わが国も円安と物価高騰の波が押し寄せ、先行き不透明な状況を徐々に深刻化しようとしている。エネルギーの安定供給に向けて原子力発電が頼りにならず石油の高値も当分続くと考えると、石炭火力発電が必要に迫られてくるが、これはカーボンニュートラルの流れには明らかに逆行である。これまで強気で世界に圧力をかけてきた欧州のトーンダウンは脱炭素社会に向けた目標数値の達成には一旦ひと息かもしれない。
しかし安心してばかりではいられない。いくら愚かな人間が未知の感染症に苦しもうが、戦争によって社会不安が起ころうが関係なく、人類が経済活動を続ける以上は物質を燃焼させ二酸化炭素を排出しつづけて気温を上昇、南極?北極の氷を溶かし、有害な紫外線はオゾンホールをすり抜けて降り注いで終末時計の針をすすめるだろう。
短期的には政府や自治体等が掲げるCO2排出量の削減目標値が昨今の状況からどのように影響して軌道修正されるかは慎重に静観する必要があるが、持続可能な社会を実現させるには従前の努力も休みなく継続していかねばならないだろう。社会的には大学も、ひとつの事業所でありカーボンニュートラル実現にむけたCO2排出削減の数値目標達成に真剣に努力して取り組むことは必須である。加えて研究機関としての大学は、国や世界全体が脱炭素社会を達成するための指針となるような画期的な基礎研究や技術成果など、知の情報発信も社会に対する責任として課せられている。神戸大学も構成員の知恵を多角的に結集して省エネルギー?省資源に取り組みつつ、持続可能型社会実現に向けた大学発の環境イノベーションを起こすことで、世の中のお役に立てないものかと願う。