武田神戸大学長の環境への思いを聞くため、西山環境保全推進センター長がインタビューを行いました。
武田神戸大学長の環境への思いを聞くため、西山環境保全推進センター長がインタビューを行いました。
本日は、神戸大学の環境活動についての、学長のお考えをいろいろお伺いしたいと思います。神戸大学で平成18年度に環境憲章を制定しました。この憲章に沿ってお話を伺えればと思います。
まずは、憲章の基本方針第1項の「環境意識の高い人材の育成」についての、武田学長のお考えをお聞かせください。神戸大学としての特長となる点についてもお願いいたします。
私の専門は物理学ですので、環境問題について、物理学の観点からお話ししたいと思います。今の日本における環境?エネルギーの問題、例えば、福島第一原子力発電所の事故に端を発した原発の問題ですが、人間が直接取り扱えるエネルギーは、たかだか数電子ボルト程度であると思います。ところが原子力発電所で発生するエネルギーは、メガ電子ボルトつまり百万倍のスケールです。また、原発で発生する核のごみは、放射線が出なくなり無毒化されるまでに百年、千年、万年が必要になります。高いエネルギーをいかに制御し、また、生成物を世代、時代を超えてどのように処理していくのか非常に解決が難しい問題です。CO2の濃度増加による地球温暖化に関しても、これまでの公害のように局所的なことではなく、地球全体の気候に大きな影響を与える規模が大きくデリケートな問題です。
このように、人類が直面している問題は、その大きさにおいて、継続する時間的、影響を受ける空間的なスケールが極めて幅広い特長があると考えます。このようなことを解決するためには、スケールの大きな現象を理解し、解析し、対処していくことが重要で、それを担う人材の育成が必要だと思います。
私は、今述べたように時間的、空間的に大きい事象を取り扱える学識を有した学生の育成が重要であると考えます。諸問題を解決していく際には、単に科学技術的なアプローチだけでなく、社会実装するためには、人文社会分野でのアプローチ、経済性の検討や政策的なアプローチも必須になります。その点では、総合大学としての強みを活かした教育ができるのではないかと考えております。
総合大学としてのメリットを十二分に活かすことが重要ですね。教育とも関連しますが、基本方針の第2項目の「環境を維持し創造するための研究推進」については、いかがでしょうか。環境問題解決にかかわる先端研究推進におきましても、文理融合型のプロジェクトフォーメーションが重要となってきます。環境?エネルギー問題に関しましては、日本国内だけでなく、グローバルな展開、特に環太平洋アジア地域との協力も重要なポイントとなっているように思われますが、その点はいかがでしょうか。ホームページから視聴できる学長の学生インタビューにおいても「世界視点の取り組み」を取り上げられておられました。
環境保全に寄与する研究を促進していくことはもちろんで、これまで進めている神戸大学のフラッグシッププロジェクト(バイオ資源の有効利用と新たなプロセスの創製、膜工学技術開発)だけでなく、新たなプロジェクトを生み出していくことに努力したいと思います。加えて、ご指摘のとおり、今日の環境保全は、日本で局所的に実現すれば良いものではなく、広域、例えば東アジア地域で検討しなければならない課題となっています。国境を超えての共同研究ネットワーク作りが極めて重要となってくることを強調したいと思います。
基本方針の最後、第3項ですが、「率先垂範としての環境保全活動の推進」を謳っています。神戸大学の環境保全活動についてどのようにお考えでしょうか。「率先垂範」の言葉は、単に学生教職員に対してのみならず、広く“社会”に対して、“知”の発信地である神戸大学が、自らその生み出した叡智を率先して実践する、といった意味を含んでいると読み取れますが、その点もいかがでしょうか。
高等教育研究機関である大学においては、高度な研究教育を実施するだけでなく、知の集積地の構成員として高い倫理観を持った知識人として環境保全を遂行していく義務があると考えます。神戸大学の構成員が率先して、環境負荷の高い廃棄物を削減し、排出を抑制する、エネルギーを効率的に使用する等、モラル?リーダーとして、地域に模範を示していくことが大事だと思います。
本日は、誠に有難うございました。最後に、武田学長から本学の構成員、教職員、学生に対してメッセージを頂戴できればと思います。
環境保全に関する活動は、瞬間的に達成できれば良いというわけではなく、廃棄物の削減、省エネルギーはもちろんのこと、環境に資する学生の育成には長い時間がかかります。また、研究プロジェクトに関しても息の長い努力が必要になるでしょう。神戸大学の構成員の皆様には、今後とも、研究、教育、環境保全活動に協力をお願いしたいと思います。