「レポート(論文)が書けない」という悩みは、国や文化を超えて存在します。本書では、「書けない生徒?学生の支え方を知りたい」という指導者の要望に応えつつ、単なるノウハウに閉じない議論を展開しています。「書いたものをどう評価すれば効果的なのか」「ルーブリックの活用法と留意点を学びたい」という日々の指導に関する疑問?要望から、「世界のライティング教育の理論や実践を知りたい」「どんな歴史的?文化的?教育的背景の中でライティング教育が形作られてきたの?」「アカデミック?ライティングとパーソナル?ライティングは違いすぎるように思うけれど、どう整理したらいいの」といった、研究的な問いまで深めることができます。
書くことと自己形成は密接な関係があり、書くことの指導は人間を育てることそのものです。本書が、誰かに「書かされる」世界から、「書くことはおもしろい」という世界を拓く、その一助になれば幸いです。(人間発達環境学研究科 川地亜弥子)
まえがき
第Ⅰ部 ライティング教育の俯瞰図
第1章 ライティング教育序説──アカデミックとパーソナルという枠組み
第Ⅱ部 アカデミック?ライティング
第2章 米国におけるアカデミック?ライティング教育
──現代伝統修辞学における形式的完成の追求
第3章 フランスにおけるディセルタシオンと言語資本──書くこと、話すこと
第4章 ライティングの評価はどうあるべきか──ルーブリック論争を調停する
第5章 ルーブリックを飼いならす──論証の評価、論証としての評価
第Ⅲ部 パーソナル?ライティング
第6章 米国におけるパーソナル?ライティング教育
──「自己表現」という厄介者と付き合う
第7章 フランスの大学における「日誌(Journal de bord)」の実践
──社会?文化的格差を意識した初年次教育
第8章 日本の大学におけるパーソナル?ライティング教育の現代的な意義
第9章 生活綴方における書くことの教育
──書くこと?読むこと?話すことを通じた人間形成
第Ⅳ部 教師教育におけるライティング
第10章 教師教育における書くことの指導と評価──ケース?メソッドの理論と実践
第11章 書くことで教師を育てる──福井大学の教員養成カリキュラムを事例に