本書の構成を簡単に紹介する。第Ⅰ部「領域的?地理的トランスボーダー化するアジア系文学研究」は、ヴェトナム系アメリカ難民の文学、初期アジア系アメリカ文学、日系日本語文学、野口米次郎 (ヨネ?ノグチ) の翻案探偵小説、ジュンパ?ラヒリのトランスボーダー文学、ジェーン?オースチンの『分別と多感』を捩ったカレン?テイ?ヤマシタ最新作『三世と多感』(2020) など、アメリカとアジアの間を往還する「世界文学」としての領域的?地理的トランスボーダー化するアジア系文学を扱っている。第Ⅱ部「アジア系文学のジャンル的トランスボーダー」は、SF、グラフィック?ノベル、クイア文学、実験詩、原爆文学など、ジャンル的トランスボーダーとも言えるほどのジャンル的な広がりをみせるアジア系文学を扱っている。第Ⅲ部「トランスボーダー化するアジア系文学の研究パースペクティヴ」は、エコクリティシズム、マルチカルチュアリズム/マルチレイシャリズム、インターレイシャリズム、人種的ハイブリディティ、ポリカルチュアリズムなどのトランスボーダー化した研究パースペクティヴにより、アジア系文学を扱っている。このように、本書は、従来の「アジア系アメリカ文学」の枠組では捉えきれない領域的?地理的のみならずジャンル的?パースペクティヴ的にもトランスボーダー化したアジア系文学を、「アジア系トランスボーダー文学」として研究を進展させる論集である。
沙龙国际娱乐_澳门金沙投注-官网研究科 教授 山本秀行