壱人両名

壱人両名

江戸日本の知られざる二重身分

江戸時代、ある時は侍、ある時は百姓と、二つの名前と身分を使い分ける男たちが全国に無数にいた。彼らの行動には、どんな理由や背景があったのか。

  • 著者
  • 尾脇秀和
  • 出版年月
  • 2019年04月
  • ISBN
  • 9784140912560

江戸時代、一人の人間が、二つの名前と身分を同時に保持して使い分け、百姓でありつつ武士でもあったりする——。

このような者たちを、「壱人両名」(いちにんりょうめい) といった。

現代人の一般的なイメージとは違って、江戸時代には様々な身分移動が行われており、壱人両名と呼ばれた二重身分も、広範かつ多数、存在していたのである。

ある時は帯刀した「大島数馬」、またある時は百姓の「利左衛門」——などと、名前と姿をその時々で変えて、一人二役を演じるが如き光景は、今では不思議なものにもみえる。一体その行動には、どんな理由や背景があったのか——。

本書は様々な事例を通じて、これを具体的に明らかにしたものである。壱人両名を見つめたとき、現代社会とは異なる江戸時代の社会の仕組みや、その建前と実態、そこに生きた人々の価値観、秩序観……いろいろなものが浮かび上がってくる。

経済経営研究所 研究員 尾脇秀和


目次

  • 序章 二つの名前をもつ男
  • 第1章 名前と支配と身分なるもの
  • 第2章 存在を公認される壱人両名—身分と職分
  • 第3章 一人で二人の百姓たち—村と百姓の両人別
  • 第4章 こちらで百姓、あちらで町人—村と町をまたぐ両人別
  • 第5章 士と庶を兼ねる者たち—両人別ではない二重身分
  • 第6章 それですべてがうまくいく?—作法?習慣としての壱人両名
  • 第7章 壊される世界—壱人両名の終焉
  • 終章 壱人両名とは何だったのか