ヨーロッパの民族対立と共生 増補版

ヨーロッパの民族対立と共生 増補版

民族紛争を解決する、あるいは未然に防止することは可能なのか。現代ヨーロッパにおける民族対立の歴史を検証し、民族共生はどのように実現しうるのかを考える。

  • 著者
  • 坂井一成
  • 出版年月
  • 2014年09月
  • ISBN
  • 9784755612640

異なる民族は相互に戦い合う運命にあるのだろうか。民族紛争を解決する、あるいは未然に防止することは不可能なのだろうか。本書はこの問いに挑んでいる。

対象として取りあげた西欧は、アフリカ、アジア、ロシア?東欧の諸地域などと比べると民族紛争の発生という点では極めて低頻度であるが、数多くの民族が隣り合い、混じり合いながら共存している点では、これら諸地域と何ら変わりはない。

では逆に、西欧では、なぜ安定が可能となり、暴力的な紛争の発生が未然に防がれているのであろうか。西欧政治に特徴的な要素として論及される民主主義や人権、国内政治や国際政治の分析に欠かせなくなったガヴァナンス(governance)、さらには現代社会を特徴づけるグローバリゼーションなどを手がかりに検討し、民族紛争を解消ないし予防する「共生の政治」とはどのような政治なのかを探究する。

初版(2008年4月刊行)は、2008年度の「村尾育英会学術奨励賞」に選ばれた。この増補版では、全体的なアップデートを行った上、フランスでの地域少数言語の地位向上を図る2008年の憲法改正をめぐる政治過程分析の章を加えた。

国際文化学研究科?教授 坂井一成


目次

  • 第1部 理論の射程
    • 第1章 国際関係理論のなかの民族問題
    • 第2章 ヨーロッパ国際政治における少数ガヴァナンス
  • 第2部 国民国家と民族
    • 第3章 戦後アルザス地域主義の展開と特質
    • 第4章 フランスの対エスノ地域政策?1970~1990年代
  • 第3部 ヨーロッパ統合と民族
    • 第5章 2008年憲法改正にみるフランスの政治過程
    • 第6章 ヨーロッパ統合過程におけるエスノ地域の位置付け
    • 第7章 教育?文化におけるヨーロッパ統合の進展とエスノ地域の位置付け
  • 第4部 グローバリゼーションと民族問題
    • 第8章 グローバリゼーションと民族をめぐる政治
    • 第9章 民主主義の新たな課題と展望?多民族共生の政治に向けて
  • おわりに 民族問題の非政治化のために