カーブジェン株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役:中島正和)、国立国際医療研究センター(現 国立健康危機管理研究機構)、国立大学法人神戸大学は、細菌感染症菌種推定支援AIソフトウェア「BiTTE?-Urine(ビッテ?ユリン)」を共同で開発し、この度、AIがグラム染色画像を解析して尿路感染症に関連する原因菌を専門医療職と同等の精度で識別できることを国際的に初めて示しました。
この研究成果は、2025年4月23日に英国微生物学会が発行する国際学術誌『Journal of Medical Microbiology』に掲載されました。
研究の背景と目的
尿路感染症(UTI)は日常診療で頻繁に遭遇する疾患であり、迅速かつ正確な病原体の判定が治療効果に直結します。従来、グラム染色所見の読み取りには専門的な知識が必要とされ、診断の一貫性や精度の確保が課題となっていました。国立国際医療研究センターおよび神戸大学では現場でそれぞれの研究代表者の経験からこの問題点を強く認識してまいりました。
この課題を解決すべく、カーブジェン株式会社、国立国際医療センター?国際感染症センター、神戸大学はAIを活用し、スマートフォンで撮影したグラム染色画像を解析する診断支援ソフトウェア「BiTTE?-Urine」を共同で開発しました。
研究結果の要点
- 国立国際医療センター国際感染症センター、および神戸大学医学部付属病院で収集した306枚のグラム染色画像を用いて評価。
- AI(BiTTE?-Urine)と20名(各施設10名)の細菌感染症専門医療職の識別精度を比較する非劣性試験を実施し、統計的に非劣性が証明されました。
- 判定対象はグラム陽性球菌、グラム陽性桿菌、グラム陰性球菌、グラム陰性桿菌、酵母様真菌、複数菌、菌体なしの7種。
- BiTTE?-Urineの正解率:87.9% / 専門で医療職の正解率:83.0%
- 特に、グラム陰性桿菌や酵母様真菌の分類で高い精度を発揮。
臨床現場への期待と今後の展望
グラム染色は尿路感染症の診断に有用な検査で、検査当日に迅速に結果が得られ、初期抗菌薬の選択や治療方針の決定を行えますが、その判読は専門性が高く習練を要し、グラム染色による塗抹検査実施施設は限定的です。BiTTE?-Urineは、専門医療職不在の施設、夜間帯などでも高精度なAI診断支援を実現し、抗菌薬の適正使用や医療リソースの効率化に貢献する可能性があります。
今後は、尿路感染症以外の領域にも応用を広げ、さらなる精度向上と社会実装を目指して開発を進めてまいります。
論文情報
タイトル
DOI
10.1099/jmm.0.002008
著者
Kei Yamamoto, Goh Ohji, Isao Miyatsuka, Kei Furui-Ebisawa, Ataru Moriya, Shogo Maeta, Hidetoshi Nomoto, Masami Kurokawa, Kenichiro Ohnuma, Mari Kusuki, Yukari Uemura, Norio Ohmagari
掲載誌
Journal of Medical Microbiology
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神戸大学都市安全研究センター
神戸大学都市安全研究センターでは、安全かつ快適な都市の理念を構築し、それを実現するための手法,システムについて総合的に教育及び研究を行っています。中でもリスク?コミュニケーション研究部門感染症リスク?コミュニケーション研究分野おいては、新興?再興感染症への対策や臨床感染症専門医教育への提言、災害救援者の労働安全衛生など、日常生活および自然災害時における感染症リスクコミュニケーションについての実践的研究を行っています。
カーブジェン株式会社
カーブジェンは、ライフサイエンス分野において、診断支援、研究の効率化、品質管理の標準化?自動化を推進し、熟練技術者の不足や地域格差といった課題の解決に取り組んでいます。正確かつ迅速な結果を提供することで、医療や産業の現場を支援しています。また、AI技術とデジタル?プラットフォームを活用し、研究者や医療従事者の連携を強化。薬剤耐性問題をはじめとするグローバルな課題の解決に貢献することを目指しています。国内外の有力研究機関とのオープンイノベーションを通じて、産官学連携による未来の共創にも力を注いでいます。
関連リンク
- 製品の詳細はこちら(外部サイト)(※医療関係者向け)
- 「細菌感染症菌種推定支援AIソフトウェアBiTTE?-Urine」をカーブジェンと開発 |(神戸大学ニュースサイト)