9月17日、神戸製鋼所神戸発電所の見学機会をいただき、学生有志が参加しました。灘区灘浜にある同発電所は、大学構内からも高く聳え立つ煙突や工場の建屋の姿が見て取れるように、六甲台地区キャンパスからほど近い場所にある都市型発電所であると同時に、神戸市のピーク電力需要(約200万kW)を上回る270万kWの出力能力を有しており、市内はもちろん阪神地域の電力自給率向上に寄与しています。一方で、製鉄所を端緒とする発電所であり、CO2を多く排出する石炭火力による発電を行っていることから、脱炭素の取組みが求められている発電所でもあります。
現在の神戸発電所は、1959年に操業した神戸製鉄所の敷地に建設されたもので、同製鉄所は、1995年の阪神?淡路大震災、さらに2013年度に上工程設備を加古川製鉄所へ集約するという大規模な意思決定を行い、2017年に第三高炉の操業を終えるまで、銑鋼一貫製鉄所として発展してきました。神戸製鋼所では、廃止した高炉跡地を利用し、製鉄所が培ってきた自家発電技術とノウハウ、石炭のハンドリング技術や環境技術、さらに岸壁や荷揚げ設備といった製鉄所時代からのインフラを最大限に活用して、高効率の石炭火力発電所を建設、運営してきました。
1995年の電気事業法改正を機に電力卸供給事業への進出を決定した同社は、2002年に1号機、2004年に2号機の運転を開始。さらに2011年の東日本大震災後に電力事業を拡大し、2022年に3号機、翌23年に4号機の運転を開始しています。特に、新しい3?4号機については、石炭の燃焼により600℃もの高温の水蒸気によってタービンを回転させて発電する超々臨界圧(USC)の発電設備を備えており、より効率の高い発電が可能となっています。1?2号機、3?4号機ともに、神戸市との間で環境保全協定を締結しており、高度な排煙処理システムによる窒素酸化物やばいじん、硫黄酸化物の除去といった大気汚染の防止をはじめ、石炭粉じんの飛散防止や取放水温度差の制御による海洋環境への負荷低減、騒音防止対策など、高度な技術による最高水準の環境保全に取り組んでいます。また、神戸ならではの景観や周辺環境にも配慮し、煙突の高さは海側の主要な視点場から六甲山の稜線を超えない高さの150m、住宅地に近接する発電所であるがゆえに環境保全措置を強化するなど、地域と共生する都市型発電所をめざした取組みが進められてきました。灘五郷の西郷地区に立地することもあり、発電所の排熱を有効利用して周辺の酒造各社に蒸気を供給することで、従来各社が個別に設置していた重油焚きボイラが不要になり地域としての省エネルギーに寄与しているという点も、神戸発電所ならではのユニークな取組みです。

見学会では、イントロダクションとして、こうした発電所の経緯や環境保全の取組みについて、久山誠二所長からレクチャーをいただきました。とくに、カーボンニュートラルを目ざした取組みとして、燃焼時にCO2を発生しないアンモニアの混焼を実現するための最新の動向や中長期のロードマップをはじめ、自治体との協力による下水汚泥燃料の混焼、食品残渣等から作るバイオマス燃料などについてもご紹介いただきました。
見学では、3?4号機の建屋内を案内いただき、工場内の設備をはじめ、内装の色彩や建具、化粧部材に至るまで、工場のイメージを一新されるような工夫がなされていることに一同驚きを抱きました。また、建屋屋上からは、発電所敷地内はもちろん、海側?山側のパノラマを望むことができ、「地域との共生」のイメージを視覚的にも得られる体験となりました。現在は神戸線条工場となっているエリアでは、現在も現役で稼働する製鉄所時代の施設群も一望することができました。ここで製造される自動車弁ばね用線材は、世界で50%以上という圧倒的シェアを占めています。
終了後は、排出したカーボンの回収やアンモニア混焼した際の窒素酸化物発生に対する考え方、製鉄事業における脱炭素の取組み等について参加者から質疑を行い、久山所長に応答いただきました。
今回の見学の受け入れにあたり、快く受け入れていただき、大変貴重な機会を設けていただいた神戸製鋼所の皆さまに心より感謝申し上げます。
《神戸発電所からのメッセージ》
神戸大学の皆さんへ
このたび、神戸大学SDGs推進室の皆様に神戸発電所を見学いただきました。
六甲台キャンパスからもその姿を望むことができる神戸発電所は、大都市におけるライフラインの確立、地域へのエネルギー供給、環境保全、地域への社会貢献、カーボンニュートラルへの対応などに取り組んでいます。
今回の見学では、神戸発電所の歴史や技術的な特徴、環境保全への取り組み、さらにはカーボンニュートラルを目指した最新の動向などについてご説明いたしました。皆さんの今後の学びや進路選択において、エネルギーや環境、地域社会との関わりについて考えるきっかけとなれば幸いです。改めて、積極的に参加してくださった皆さんに感謝するとともに、今後のさらなる成長と活躍を心より期待しています。
最後に、神戸発電所は、これからも神戸の街とともに歩み、未来につながる技術の掛け算を通じて、これからの都市型発電所に求められる様々な期待に応え、私たち神戸の街の暮らしと安全を支える発電所として、期待される役割を果たすよう努力?挑戦を続けてまいります。

(SDGs推進室)