堺港発電所での集合写真 



 関西電力株式会社との共同企画として実施している連続講座の第3回は、11月28日、同社堺港発電所(LNG火力発電所)と、液化水素製造プラントの株式会社ハイドロエッジ(ともに大阪府堺市西区築港新町)での現地見学を行い、18名が参加しました。

 火力発電は、資源に乏しい日本において、高度経済成長期の主力電源としてその割合を増していきましたが、2011年の東日本大震災以降の再生可能エネルギーの急速な拡大を受け、電力需給の調整役として重要な役割を果たしています。また、水素エネルギーは、地球環境問題と資源エネルギー問題を同時に解決できる可能性を持つクリーンエネルギーとして期待が高まっています。特に、液化水素は大量貯蔵?大量輸送が可能であり、かつ高純度であるという利点から、水素の大量消費時代に欠かせないエネルギー源といわれています。

■堺港発電所

 堺港発電所は、ちょうど60年前、1964年12月に運転を開始した火力発電所で、1974年からは石油から天然ガス(LNG)焚きにシフトしました。以来約40年間は、ボイラーで燃料を燃やして蒸気を作り、蒸気タービンのみで発電する「汽力発電方式」による発電が行われてきましたが、地球環境問題への積極的な対応と、エネルギー資源の有効利用のため、2006年から最新鋭高効率の「コンバインドサイクル発電方式」への更新が行われ、2009-2010にかけて同方式による運転が開始されました。さらに、2017年4月のガス小売全面自由化開始に伴い、発電所構内にガス製造施設を設け、同年9月からガス供給が開始されました。

 コンバインドサイクル発電方式は、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式で、天然ガスを燃やした高温?高圧の燃焼ガスでガスタービンを回して発電するとともに、その排気ガスの熱を有効活用して蒸気を作り、蒸気タービンを回して発電する方式です。堺港発電所は、約1500℃の燃焼ガス温度を実現するコンバインドサイクル方式で、出力40万kwの設備を計5台備えており、従来の汽力発電方式よりCO2排出量を30%削減、エネルギー効率を約40%向上することに成功しています。

 堺港発電所での取組み概要をレクチャーしていただいた後、発電所構内や間もなく撤去工事が開始される旧式施設を見学しました。発電施設内では、デジタル技術を活用した「スマート保安」の試行として導入されているロボットも紹介されました。見学後の質疑応答では、技術的観点から経営的観点、さらに天気や他の発電施設の出力状況などを常時観測し、緻密な調整が必要になる火力発電の運用など、多くの参加学生から多岐にわたる質問が出されました。

 

コンバインドサイクル発電設備 
蒸気タービン下部の復水器 
堺港発電所見学後の質疑の様子

■ハイドロエッジ

 ハイドロエッジは、2000年に関西電力が堺港LNG輸入基地(堺LNGセンター)の建設を計画したことを機に、2006年に設立された液化水素製造プラントで、空気分離ガスプラントを併設しているのが特徴です。LNGの冷熱を活用して、空気から窒素?酸素?アルゴンの産業用ガスを分離?製造し、さらに生成した液化窒素の冷熱を利用して、原料であるLNGから水蒸気改質によって得た水素を効率よく液化することができます。

 映像での取組み紹介の後、液化水素プラントと空気分離プラントの現場を見学し、質疑応答を行いました。エネルギー源としての水素の可能性とその課題、資源が乏しい日本がおかれている現状、「経済と環境の好循環」を作り出すための課題や展望などについて、さまざまな意見が交わされました。

ハイドロエッジ見学後の質疑応答(左中央は同社美澤社長) 

 第2回の大飯発電所(原子力発電所)と今回の見学会を通じて、エネルギーや脱炭素をめぐる最新の動向と課題について、現場を見、現場の声を聞くことで学びを深めてきました。連続講座後半は、これまでのインプットを踏まえ、あらためて2050年カーボンニュートラル達成のためのエネルギーミックスのあり方を議論していきます。
 現地見学にあたり多大なご協力いただいた堺港発電所、ハイドロエッジの関係の皆さまに感謝申し上げます。

(SDGs推進室)