神戸大学都市安全研究センターは11月16日、阪神?淡路大震災30年をテーマとするオープンゼミナールの第3回をハイブリッド形式で開催しました。この日のオープンゼミナールは記念すべき第300回目にあたります。長年、都市安全研究センター教授としてオープンゼミナールを継続してきた北後明彦名誉教授が「建築?都市安全計画学の30年とこれから」と題した講演を行いました。
阪神?淡路大震災では木造住宅密集市街地を中心として多くの火災が発生しました。幹線道路や耐火造建物で焼け止まり、延焼遮断帯や都市防火区画の有効性が実証されました。ただ、主要な道路沿いの防災性能だけを高めても街区内の延焼リスクは低下しません。
北後名誉教授は、阪神?淡路大震災以降、街区内での延焼を対象にした火災リスクの低減が研究課題になったと指摘しました。そのうえで、北後研究室のゼミ生らとともに進めた密集市街地の街区レベルの防災研究の内容を紹介しました。その特徴は2つあります。第1に市街地の防災性能をシミュレーションによって評価する建築火災工学にとどまらず、地域におけるまちづくりプランの策定や合意形成を含めた研究に取り組んだ点です。第2に防災性と地域性の双方を考えた計画学です。その事例として伝統的建造物群保存地区を対象にした防災まちづくりの研究を挙げ、地域固有の景観を守りながら、効果的な火災安全対策を検討したことが説明されました。
最後に、延焼遮断帯や広域避難地などを配置する沿道型の防災対策と、個々の建築物の性能を高める個別型の防災対策を組み合わせていく重要性が論じられました。木造密集市街地を燃え広がりにくく、逃げやすくするための研究は未だ道半ばであり、福祉などの現代的な課題を解決し、地域活力を向上させて市街地の安全を図っていくアプローチが重要であると述べました。
北後名誉教授は建築?都市安全計画学の研究について「安全確保の対策をいかに社会の中で実装していくかという過程」まで含める必要があると語りました。長年、北後名誉教授が中心となって運営してきたオープンゼミナールの場がその研究実践の場であったといえます。
神戸大学は、2025年1月11日に「神戸大学阪神?淡路大震災30年シンポジウム」を開催します。午後の部では震災30年で研究がどう進化し、どのような課題があるかを複数の研究分野にまたがって討論します。詳細は下記をご確認いただき、ふるってご参加ください。
神戸大学阪神?淡路大震災30年シンポジウム | 神戸大学イベントサイト
(都市安全研究センター)