9月21日(土)、神戸大学百年記念館「六甲ホール」にて、第35回山口誓子学術振興基金
公開講演会を開催し、学外から約60名の方が参加しました。
本講演は、俳人の故山口誓子?波津女ご夫妻から寄贈いただいた基金により、本学が日本の
俳句研究の拠点の一つとして運営しているものです。
今年は、『日本古書通信』編集長?俳句同人誌『鬣(たてがみ)』同人、樽見 博先生をお招きし、
「早く逝きし俳人たち―人は何故詠おうとするのか」と題してご講演をいただきました。
この度の講演テーマは、樽見先生が『鬣』に約3年にわたり執筆された同名の連載が総括の節目を
迎えていたこともあり、自然と定まったとのことです。「紙に記録されたすべての資料」を取り扱う
古書業界と樽見先生が手がけられている『日本古書通信』、またご自身と神戸との関わりなどの紹介
を交え、ご講演が始まりました。
樽見先生が古書との出会いや人脈を通して収集された資料による調査を基に、芝不器男、片山桃史、
田中青牛、松本青志、大橋裸木など戦前戦後の混乱期に、惜しくもこの世を去った早世俳人たち
十余名が取り上げられ、時代背景と活動期間の短さ故に、一般には詳しく知り得ることが難しい
彼らについて、作品や周辺俳人たちとの関係性等から、それぞれの足跡や人となりが示されました。
ご講演の最後には、山口誓子が戦時化、病床において編んだ句集『激浪(げきろう)』を
「自身の命を見つめ続けながら作った作品」と評し、誓子の健康の回復と日本の戦後復興とが
リンクして生まれた名著として取り上げられました。
さらに、『激浪』に臨んだ誓子の句作姿勢に野心が見えないことが、同時代を生きた早世俳人たち
に重なったこともあり、樽見先生の彼らに対する心情が「残してあげたい」という思いから、
「出会いを素直に受け止めて記録していく」ことに変化したという実感をもって、次代に繋ぐことの
重要性をお伝えいただきました。
また、ご講演に際して神戸大学には、
「(商いの視点から見ると)俳句資料は数も膨大で努めて収集する人は少なく、古書価が低いため、
商品として取り扱う古書店は少ない。その意味で俳句資料は危機的状況にあるのかもしれないが
山口誓子先生の記念館ができて、まとまった資料が保管され、研究者に公開されている意味は大きい。」
とのお言葉を寄せていただきました。
神戸大学がご夫妻から寄贈を受けた資料の中には、2万冊を超える蔵書も含まれています。
これらは資料の状態が良好であれば、申請により閲覧していただけますので、ぜひご活用ください。
なお、樽見講師のご厚意により、今回のご講演原稿?配布資料をダウンロードしていただけます。
講演時間の関係により、講演では一部割愛された内容もございますので、以下「資料のダウン
ロードはこちらから」よりぜひご覧ください。
第35回山口誓子学術振興基金公開講演会
講師:樽見 博氏(『日本古書通信』編集長?『鬣』同人)
演題:「早く逝きし俳人たち―人は何故詠おうとするのか」
後援:公益社団法人俳人協会/朝日新聞神戸総局/兵庫県教育委員会
/神戸市教育委員会/西宮市教育委員会
ご講演の様子を、大学公式YouTubeチャンネルでも公開いたします。
ご視聴は こちら から ※令和7年3月末日まで(予定)
資料のダウンロードはこちらから(ご講演原稿?配布資料)
山口誓子学術振興基金では、講演会のほかに山口誓子記念館、誓子?波津女俳句俳諧文庫の
運営も行っています。これらの施設は一般開放もしていますので、ご興味をお持ちの方は
HPをご覧ください。
(研究推進部研究推進課)