神戸大学都市安全研究センターは10月19日、阪神?淡路大震災30年をテーマとするオープンゼミナールの第2回をハイブリッド形式で開催しました。「災害ボランティアの30年とこれから」と題し、関西学院大学人間福祉学部社会起業学科の頼政良太助教が講演しました。
阪神?淡路大震災の被災地には過去にない多くのボランティアが駆けつけたことから、平成7(1995)年は「ボランティア元年」と呼ばれています。講演では災害ボランティアセンターの統治モデルの違いに着目して、その違いが地域や被災者に与える正と負の影響が報告され、災害ボランティアの抱える課題と今後のあり方が提起されました。
災害ボランティアセンターは阪神?淡路大震災以降に設立されるようになりました。その統治モデルには「管理?統制モデル」と「即効?自律モデル」があります。前者は現場での混乱を最小限に食い止め、円滑な運営をめざす規範に基づいて、被災者のニーズとボランティアのマッチングをセンターが行います。対して、後者は人々の多様な能力を臨機応変に活用し、時々刻々と変化する現場のニーズに応えようとするものです。
2004年には全国社会福祉協議会が災害ボランティアセンターの運営に関するマニュアルを作成し、全国各地の社会福祉協議会が中心となってボランティアセンターの設立?運営が相次ぎました。管理?統制モデルを実行するための手順が定められました。しかし、管理?統制モデルは支援対象者を決める基準を設定するため、被災者の分断を招く恐れがあると頼政氏は指摘しました。一方、2011年の東日本大震災を契機として、多様な主体による民間災害ボランティアセンターの再興が進みました。これはボランティアセンターの空間的、人的、質的な限界によって取りこぼされる被災者に対応するためでした。社会福祉協議会が主体となる管理?統制モデルと民間による即効?自律モデルの双方に課題があるため、どちらかに偏るのではなく、両者を連携、両立させていくことが必要であると頼政氏は論じました。
最後に、コロナ禍以降のボランティアセンターの変化について取り上げられました。県内在住か県外在住かでボランティアの参加?受け入れを区切る動きが加速すると同時に、一般ボランティアと専門ボランティアを区別し、専門的団体を優先する方向に進んでいると説明されました。この傾向はボランティアの価値の矮小化につながる危険性があり、価値を再興していく必要性が提起されました。その具体例として、頼政氏が代表を務める被災地NGO恊働センター(神戸市)が実施する足湯ボランティアが紹介されました。災害ボランティアは課題解決だけでなく、被災者に寄り添ってニーズを拾うと同時に、被災者が他者への発話を通して自己との対話を行い、それが被災者のケアにつながっている意義が説明されました。
都市安全研究センターでは11月16日のオープンゼミナールも、震災30年特集として開催します。詳細は下記をご確認いただき、ふるってご参加ください。
http://www.rcuss.kobe-u.ac.jp/openseminar/openseminar.html
(都市安全研究センター)